Claude Code に「調べて」と言うだけでは同じ場所しか調べてくれない——枝分かれ型ネットサーフィン法
はじめに
AIに「調べて」とだけ頼むと、多くの場合、検索エンジンに1回問い合わせて、出てきた上位の結果を要約して終わる。これで済む調べものも多いが、答えがまだ誰もまとめていない場所にある調査では、この調べ方はほぼ確実に同じ入口の範囲しか届かない。
この記事は、その限界を越えるために確立した調べ方——枝分かれ型ネットサーフィン法——の記録になる。1回検索して終わりにせず、検索結果の中から出てきた固有名詞を次の検索語に戻し、枝を伸ばし続ける。この手順を確立したことで、答えが出ないまま止まっていた調査が、繰り返しのどこかで公的機関が公開する実データに到達した。
検索エンジンへの最初の複数クエリ(角度を変えて3〜5本、まだ何も読まない)
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├─▶ 枝1 ── 開いて全部取る(本文・図・脚注・リンク)
│ └─ 固有名詞(制度名・機関名・数字の出典)を回収
│ └─ その固有名詞を新しい検索語として段階Aへ戻す ─┐
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├─▶ 枝2("似ているから"と読み飛ばさない) │
│ └─ 同じ話題を扱う別記事を開く │
│ └─ その記事にしか無い差分(数字・注記)を発見 │
│ └─ 固有名詞を回収 ──────────────────────┤
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└─▶ 枝3 … │
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段階Aへ戻る(1周して枝が増える)
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止まっていた問いの答えが、この周回のどこかで見つかる
段階A・B・C——枝を張り、選び、全部取る
最初にやるのは、1つのクエリで満足せず、角度を変えた複数のクエリを検索エンジンに投げることだ。実務でよく使われる言い方、学術的な言い方、仕組みそのものを問う言い方、数字や単位を含む言い方——最低でも3〜5通り、まだ中身は読まずに、タイトルと URL とスニペットだけを一覧として回収する。
次に、その一覧から何を開くかを選ぶ。ここで一番外しやすい判断が、「似たような内容だから」と、同じ話題を扱う別の記事を読み飛ばすことだ。実際には、同じ話題を扱う複数の記事にはそれぞれ違う数字・違う期間・違う注記が入っていることが多い。ある専門用語での実例では、同じ話題を扱った類似の解説記事が複数あった中で、その用語に具体的に触れていたのは1本だけだった。他の記事だけを読んでいたら、その枝は存在しないままだった。
開いたページからは、本文だけでなく全部取る。図やグラフは画像として撮って読む。図の注記や凡例には、本文に書かれていない出所や期間が書かれていることが多い。リンクの一覧は、次に開くべき枝そのものだ。
段階D——ループの本体
この方法の核心は、ひとことで言えば「ネットサーフィン」だ。関連がありそうな情報から、さらに有益な情報を読み取り、その語でまた検索する。一か所をずっと掘っていくのではなく、枝分かれさせて情報を膨らませていく。この繰り返しを、気の向くままではなく手順として自分に課した、というのが唯一の違いになる。
段階C で開いたページから拾えた固有名詞——制度の名前、統計の名前、著者の名前、出典として名指しされた機関の名前——を、そのまま次の検索語に戻す。1周するごとに、次に開ける枝の数はむしろ増えていく。
実際にこの繰り返しが効いた例がある。ある為替市場の実務慣行について、「実際に誰が動かしているのか」という問いに答えが出ないまま調査が止まっていた。ある専門用語(市場の相場決定の仕組みを指す固有名詞)を検索語に戻したところ、規制当局が公開しているトレーダー単位の取引データにたどり着き、その問いが実データで決着した。最初の検索結果の範囲だけを見ていたら、この経路には永久に届かなかった。
「見つからない」と「まだ見つけていない」を分けて記録する
調べた結果は、見つかったものだけでなく、たどり着けなかったものも記録に残す。1回検索して出てこなかったものを「無い」と結論づけるのは、探すのをやめたことを結果のように書いているだけになる。空振りは「その入口では見つからなかった」であって、「存在しない」ではない。入口を変えて、また戻ってくればいい。
見つけた「規則」は、報告する前に基準となる比率と比べる
この方法を回していると、途中で「規則が見えた」と感じる瞬間が来る。ここが一番危ない場面だ。ある実例では、公開されているイベントの日付を眺めていて、たまたま祝日と重なる日が何件か目についた。「祝日を狙っているのでは」という仮説が浮かんだが、全期間の祝日の比率と突き合わせて計算し直すと、目についた件数は基準となる比率より低かった。目についた数件は「祝日だから」ではなく、別の理由(近年の件数が突出して大きかったこと)で目立っていただけだった。
「気づいた」と「基準と比べて本当に多い・少ない」は別の作業だ。 分母を決め、比率を計算し、件数が少なければ「区別がつかない」とまで書く——この一手間を、調べ方の手順そのものに組み込んでいる。
手段が1つ失敗しても、調べ方そのものを諦めない
最後に、この方法を支えるもう1つの姿勢を書いておく。ある取得手段が失敗したとき——直接のダウンロードが拒否される、標準のツールで文字が読み取れない——それを「取得不可能」と結論づける前に、別の経路を試す。画面を画像として撮って読む、別の形式のファイルを探す、正面から取得できるページを経由する。1つの手段の範囲を、可能な範囲そのものだと思い込まないことが、枝を伸ばし続けるための前提になる。
この調べ方を実際に回した記録は、別の主題でも残している。
Claude Code の「キャッシュが壊れる」を一次資料まで遡る——Reddit の不具合報告→公式postmortem→arXiv論文2本
Claude Code の小さな公式ドキュメントを読み進めたら、使っていないレバーが3つ出てきた——エージェント編成・要約への指示・MCPの隠れた注入経路
枝を1本増やすのに必要なのは、新しい道具でも高度な検索構文でもなく、いま開いているページの中から次の検索語になる固有名詞を1つ書き留めるという、それだけの手間だった。止まっていた問いを動かしたのは、その1語だ。